芸人、かく語りき
vol.6 ナイツ後編

本誌で連載中、実力派芸人を紹介するコーナー「芸人、かく語りき」。ナイツのおふたり、塙宣之さんと土屋伸之さんが、それぞれのお気に入りのネタとお互いの長所を語ってくださいました。

   

knights
01年結成。08年M-1グランプリ決勝に進出し一躍有名に。内海桂子の弟子であり三遊亭小遊三一門として寄席でも活躍し続ける。

hanawa nobuyuki(左)
78年千葉県生まれ。漫才協会理事。プロ野球をこよなく愛する。『マツコ&有吉の怒り新党』(テレビ朝日)でナレーションを務めている。

tsuchiya nobuyuki(右)
78年東京都生まれ。漫才協会理事。競馬に詳しく、関連番組に出演することも。『0655』(Eテレ)出演中。

塙さんの顔。これは失いたくないです。

ナイツ


──いちばん好きなネタは何ですか?
塙 最近の一位は「肛門見えても」ですね。「こう見えても」の言い間違い。今日もそれを言いに(営業で)長野まで行きます。
土屋 だって、ほかのボケは入れたり入れなかったりするのに、「肛門見えても」だけは一回の漫才で二回入れてきますからね(笑)。
──塙さんが小学校の頃、加トちゃんの「うんこちんちん」を真似して爆笑をとったという芸人としてのルーツにもつながりますね。
塙 あ、そうですね。コウモンのおかげですね。小中高とコウモンから出入りしてましたから。
土屋 学校の「校門」ね。僕はなんだろう、「お足もとの悪い中」っていうところを「お足もとの臭いなか」っていうやつとかかな?
塙 あとは歌ネタも好きですね。志村けんさんになっちゃうやつとか、布袋(寅泰)さんになっちゃうやつ。くだらないじゃないですか。ふざけてやっちゃうようなことが好きなんです。「肛門見えても」も顔の表情含めて、僕が言ったのがいちばん面白い自信があるから好きなんですよ。「肛門見えても選手権」やったらかなり上位に食い込むはずです。
土屋 そう、やっぱり塙さんの顔なんですよ。
塙 ボケることができてるときの自分の顔が、なんか好きなんです。
土屋 そうだ、僕がいちばん気に入っているのは、塙さんの顔です。これは失いたくないです。
──お互いの好きなところ、優れているところを伺いたかったんですが、土屋さんは顔なんですね(笑)。塙さんはどうですか?
塙 やっぱり変換能力ですね。いちいち打ち合わせしなくても、なんとなく僕が想定していた言葉が出てくるのがすごいです。昨日も、面倒だから事前にネタを伝えないで、本番で急に「バレンティンが奥さんを殴っちゃったんですけど、何発だと思います? 2発なんですよ」って言ったら「60発って言えよ」って返してくる。
土屋 僕はネタをつくらないから、ふだんお笑いのことを考えてないんですよ。ずーっとぼーっとしてる。だから、いつもお客さんと同じ体温なんです。だからお客さんが「こういうフリをしたらこう返すだろうな」と思うのと同じレベルで僕も思ってるから、塙さんの話の不自然なところがわかる。芸人みたいに面白いことを考えようとしてない(笑)。
──だからこそ打ち合わせしなくてもツッコミができるんですね。テレビなどでも塙さんがボケたときに、土屋さんが止めているようでそんなに強く止めないのが印象的です。
土屋 そうですね(笑)。そんなにわかりやすくツッコまなくても、テレビだとツイッターとかで観てる方がツッコんでくれればいいんですよ。
塙 浅草でもうまい人はやたらツッコまないんですよね。

[text]釣木文恵 [photo]相澤心也


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