中川龍太郎監督『四月の永い夢』。主演をつとめるのは、高畑勲監督の『かぐや姫の物語』でヒロインの声を務めたことでも知られる朝倉あき。今作へのキャスティングのきっかけも「声」だったそうです。
――脚本を読まれた印象は?
「『なぜこんなに女性心理を巧みに描けるのだろう?』と思いました。今作は過去にとらわれて立ち止まっている主人公が、未来に向けて歩きだす様子をじっくり描いています。繊細で、中川監督自身がじっくりと(主人公の)初海という女性に寄り添って書かれたんだなと思いました」
――今作のキャスティングは、中川監督が『かぐや姫の物語』での朝倉さんの声を聞いたことがきっかけだったそうですね。高畑勲監督からは「わがままな声」と評されたそうですが、ご自身としてはどう思われていますか?
「その通りだと思います。お芝居を通して、わたしの我が強い、素の部分を暴かれてしまったんじゃないかなと思います。どの作品でも監督の描かれる世界観に寄り添いたくて、そのことしか考えていないはずなんですけど、いろんな人から『朝倉さんらしい』と言われてしまう。中川さんにも、その部分を感じとっていただけたのかもしれないです」

――滝本初海という役柄をどうとらえましたか?
「言葉少なで、割とふわふわしたところがあるのですが、その中にも力強さがある。現場でどういう芝居をしたのか、ハッキリ覚えていないんですけど、中川監督は表情ひとつにしても、キャラクターが細かく浮き出るように演出してくださいました」
――お芝居をするときは、その場の空気に身をまかせる感じですか?
「割としっかりプランをたてる方だとは思います。でも、現場では状況が常に変わっていくので、そのときそのときに委ねています。今回もそんな感じでした」
――中川監督とお仕事することになった際、思ったことは?
「『走れ、絶望に追いつかれない速さで』の太賀さん、『愛の小さな歴史』の中村映里子さん、自分と同世代の俳優さんが力を引き出してもらっていて、それを撮ってもらっていることに嫉妬をおぼえました(笑)。中川さんの作品はそんなにセリフが多くはないんですけど、言葉のひとつひとつが印象的で、こういうセリフをわたしも言ってみたい、中川さんの生み出した言葉で演じてみたいと思いました」

――俳優という仕事を続けていて、感じることはありますか?
「わたしは人にすすめられたオーディションを受けたことがきっかけで、この仕事を始めました。だから、俳優という仕事の楽しさは、少しずつ学んでいった感じなんです。『やりたいと思っていたことは、全部やったな』という思いを持ったことはあります。でも、この仕事から離れて考えてみたり、いろんな人の話を聞いて、お芝居は懐が深い先生みたいなものだと感じました。いまは自分の中に欲があるので、それがあるうちはこの仕事を続けて得るものがあると思っていますし、欲があるからこの仕事を続けられていると思います」

[photo]久田路[styling]嶋岡隆(Office Shimarl) [hair&make]野中真紀子(éclat)[text]浅川達也


asakura aki
91年神奈川県出身。08年『歓喜の歌』で映画初出演。以降、映画、テレビドラマを中心に活躍。13年には高畑勲監督の長編アニメーション『かぐや姫の物語』で、ヒロインの声を担当。ほか出演作に『神様のカルテ』(11)、『横道世之介』(13)など。公開待機作に『BLOOD-CLUB DOLLS』(秋公開予定)がある。


四月の永い夢
監督/中川龍太郎 出演/朝倉あき 三浦貴大 川崎ゆり子 高橋由美子 ほか 配給/ギャガ・プラス(17/日本/93min) 3年前に恋人を亡くした27歳の滝本初海。 教師を辞めたままの穏やかな日常は、亡くなった彼からの手紙をきっかけに動き出す。元教え子との再会、染物工場で働く青年からの告白。 そして心の奥の小さな秘密。5/12~新宿武蔵野館ほか全国順次公開
©WIT STUDIO / Tokyo New Cinema
映画『四月の永い夢』オフィシャルサイト