paulina garcia
60年チリ生まれ。演劇学校で演技を学んだ後、83年から舞台女優として活動を開始。数々のTVドラマに出演し人気を博す。 07年にスタートしたTVシリーズ 『Cárcel de mujeres』で、チリのアカデミー賞やエミー賞といえるアルタザール賞最優秀女優賞(テレビ部門)を受賞。02年『Tres noches de un sábado』で映画デビュー。その演技力は高く評価されている。


いま起きていることが、
つくる映画に対して影響を与えることは当然でした

映画『グロリアの青春』で、第63回ベルリン国際映画祭銀熊賞・女優賞を受賞し、「ラテンアメリカのメリル・ストリープ」と称されるパウリーナ・ガルシア。チリのサンティアゴを舞台に、一人の女性がたくましく生きる姿を描いた本作。その背景にあるテーマについて語っていただきました。

――『グロリアの青春』は、普遍的な物語でありつつ、背景にはデモなど社会的状況も出てきます。それは意図的ですか?
「この作品が撮影された2011年から12年にかけて、チリでは教育改革を求める抗議行動が学生たちによって盛んに行われていました。というのも、かつて大学の学費は無料だったのですが、独裁政権以降、有料となりどんどん高額になっていったんです。
 デモには学生の家族や教師たちも、教育の質の向上と学費の無料化を求めて参加しました。本作が本国で興行的成功を収めたのは、その背景もあったからだと思います。多くのジャーナリストは、グロリアという存在といまの社会状況の変わり目がぴったり合致したという言い方をしました」
――では、グロリアと同じ世代だけではなく、若い世代からも支持されたのですか?
「あらゆる世代に受け入れられました。たとえばチリの有名な劇作家は『僕は30歳で男だが、自分がまるでグロリアのようだと感じた』という感想を述べました」
――演じる上でその背景について、監督とお話しはされましたか?
「自分たちはその社会的状況の産物であり、グロリアはその中を生きている。いま起きていることが、これからつくる映画に対して影響を与えることは当然でした。監督とお互いに納得した上で、『いまの状況をこのまま映画の背景に使おう』という話をしました。
 むしろ、監督と私はグロリアのキャラクターについて一度も話をしていません。彼女がどのような旅を続けて、どこにたどり着くのか。その間にどのような感情を持つのか、また身体の状態について話をして、人物像を掘り下げていきました」
――監督から事前に本や映画を渡されたそうですが、それは役づくりのためのものに限らなかった?
「監督からもらった資料は、アンドレアス・ドレッセン監督の『Wolke 9』やホイットマンの詩など、多岐にわたりました。それらは必ずしも人物像をつくるためだけではなく、もう少し深いインスピレーションを含んだものとして受け取りました。監督は役者を操作するような小手先の演出はせず、お互いにコミュニケーションを重ねてつくりあげていく。それを可能にするためのものでした」
――様々な見方が出来る作品だと思います。
「皆さんにはいろいろ発見していただけたらと思います。というのも、私自身、グロリアを演じながら発見することが多かった。それに様々な人との出会いがあり、楽しかった。それらが、映画の至るところに出ていると思うので、それを一緒にわかちあい、体験していただければと思います」

グロリアの青春
監督/セバスティアン・レリオ 出演/パウリーナ・ガルシア セルヒオ・エルナンデス マルシアル・タグレ ほか 配給/トランスフォーマー(13/スペイン+チリ/109min)
©2013 Fabula – Muchas Gracias