matsunaga daishi
74年東京都生まれ。10年にドキュメンタリー映画『ピュ~ぴる』を発表、世界各国の映画祭に正式招待される。15年、劇場映画監督デビュー『トイレのピエタ』は、ロッテルダム国際映画祭など各国の映画祭に出品され、国内でも日本アカデミー賞新人俳優賞などを受賞。THE YELLOW MONKEYのドキュメンタリー映画(タイトル未定)が17年公開予定
kikuchi takeo
78年栃木県生まれ。助監督を経て、15年に『ディアーディアー』で劇場映画監督デビュー。第39回モントリオール世界映画祭に正式出品された。WEBドラマ『マチビト 神楽坂とお酒の話』が配信中。2作目となる『Hello Goodbye ハローグッバイ』は第29回東京国際映画祭・日本映画スプラッシュ部門に正式出品され、17年に劇場公開予定。
kobayashi tatsuo
85年京都府生まれ。07年の『少年と町』が第10回京都国際学生映画祭グランプリを受賞。10年、自主制作映画『カントリーガール』を監督。若手映画作家育成プロジェクト(ndjc2012)に参加し『カサブランカの探偵』(13)を監督。15年『合葬』で劇場映画監督デビュー。モントリオール世界映画祭ワールドコンペティション部門に正式出品された。
ninomiya ken
91年大阪府生まれ。08年、『試験管ベイビー』が、第3回高校生映画コンクール映画甲子園2008にて監督賞を受賞。14年制作の『眠れる美女の限界』がゆうばり国際ファンタスティック映画祭2015にて審査員特別賞を受賞。15年に『SLUM-POLIS』で劇場映画監督デビュー。レインダンス映画祭2015に正式出品された。
誰が呼んだか日本映画界のギャング・オブ・フォー
松永大司×菊地健雄×小林達夫×二宮 健[Vol.3]
(以降映画の結末に触れている箇所がございます)
二宮「最後の展開は僕も読めてないです。松永さんのアイデアはわかるけど、どうやるの?と思っていたんです。現場ではそれを実際に見せてもらった感覚ですね」
松永「ただ、今回はあの短時間で松本くんになんらかの変化を起こさないといけないから、過剰にやっているところはある。ああいうことは人を見てやらないといけないことだよ」
――菊地さんは、どのような気持ちであの場に?
菊地「僕は『助監督としてオーディションをやるつもりで来てくれればいいです』と言われて行っただけで、具体的になにをやるかは知らなかった。でも僕も、小林くんもカメラが回り続けているのを感じてはいました。松本ファイターくんの中で変化が起きているのを、リアルタイムで感じたんです。松永さんと松本ファイターくんのガチンコ勝負というか、監督として現場で芝居を見ていて、スリリングだなとか、わくわくしたり、ドキドキする感覚が目の前で起きているなと感じましたね」
松永「カメラが回っていたのは、松本くんも気づいていたと思う。その中で、ここにいる4人と、プロデューサーの岡田(真)さん、小川(真司)さんの前で、あんな風にさらけ出すことを要求されて、相当タフな経験だったと思います。彼のしゃべり方がリアルになったときに、こっちも『もっとこうした方がいいんじゃないか?松本くん』と、どうすれば彼が変わるのか、みんなが親身になり出したのは面白かったですね」
小林「でも、あそこは完成した映画には残ってないよね?」
二宮「だいぶ切ったんです。あのやりとりを延々と見せても……」
小林「松本くんがなかなか変わらなかったんだよね(笑)」
一同「(笑)」
二宮「ファイターはぬるま湯にずっとつかっていて、僕が『おい!』と言っても、全部ファイターの想定内で。ああ見えてしたたかなんです(笑)。今回はわかりやすく『トイレのピエタ』の松永監督がガチで演出するという方がファイターの緊張感も増すと思った。そのショック療法を特等席で見させてもらった感じでしたね」
菊地「とはいえ、あの場で起きたことは松永さんが主導したけど、場をつくったのも、現場が終わってからかたちにしたのも二宮健。もし自分がニノケンの立場なら、あの状況はきつい。松永さんからは決断を促されているし、高校時代からの友人、ファイターは混乱の極みに達している。下手するとファイターをマジでつぶす可能性もあったわけで、ニノケンはそこに対する責任はとらないといけないわけじゃん」
二宮「最後のシークエンスは、どう収拾させるのか、僕も現場で葛藤していたんです。劇中にも僕が松永さんからとがめられているところがあって」
小林「松永さんから『どうしたいんだよ?監督はお前なんだから、お前がケリつけろ』と言われてたよね。でも、ニノケンが『オレはどっちでも……。ファイターが決めればいい』みたいなことを言ったときに、『あれ?』と思って」
松永「だから、今日もいきなり共同監督って言い出したから、こいつ適当なこと言ってるなと思って(笑)。責任の所在が変わってくるから」
一同「(笑)」
二宮「いや、オレがあの場でファイターに制裁を加えて展開させるよりは、まだ放っておいてもいけると思った。その先はまだあるから、松永さん、まだあきらめないでという意味だった」
松永「二宮と打ち合わせたときに『カットがかかってからは、お前自身もさらけ出せ。オレたちだけ引きずり出しておいて、ひとりクールになっているのは嫌だからな』と言ったんですよ。それが『いやー……』と言っているから。でも、それが二宮の演出だったんだね」
二宮「そこを完成した映画に残したのが、僕の誠意……」
松永「それでいいんじゃない」
菊地「作品にニノケン自身が悩んでいる場面を残した。変にかっこつけて、あそこを切っちゃう人もいると思う」
二宮「まあ、あそこは恥ずかしいですけど」
松永「でも、オレたちにもっと恥ずかしい思いさせているからな(笑)」
二宮「松永さんの演出ですけど、僕とファイターの関係性がオチになるとは思っていなかった」
小林「あれは現場で見ていても、なるほどと思った」
二宮「まさかファイターがオレの言葉で感情が壊れていくとは思ってなくて。あそこで初めて『あ、オレとお前の話なのか』と」
松永「そりゃそうだろ」
二宮「でも、自分にとっては想定外すぎて。編集で僕という存在が作品に入っていないと、オチに説得力がないことに気づいたんです。自分が出ることは積極的ではなかったんですけど、必然的にいまの編集になりましたね」
松永「やっぱりこの映画の中心にあるのは、二宮健と松本ファイター、ふたりの歴史じゃないですか。結局は松本くんにとって、はじめましての僕らのことはどうでもよかったんです。松本くんが心を動かすのは、本当に感謝しているのは、二宮に対してだったということですよ」
二宮「それを松兄は探りながら気づいたんですか?」
松永「そりゃそう。話していて」
小林「松永さんがおかんの話とかしても、松本くんはなにも感じてなかったからね」
二宮「(笑)」
松永「その人を知るために、なにがこの人の心を動かすのかは、探っていくんです。でも、松本くんは面の皮が分厚くてね。その彼が二宮に対してだけは感謝を感じているんです。二宮の話で変わるのがわかったんですよ。そこを押していったら、ああいうオチが生まれた」
一同「(笑)」
小林「特殊ですよね」
松永「ふたりにしかわからないことがあるんだよ。そこに本物の感情が動く人(二宮)がいたってこと」
二宮「それは僕もびっくりしたんですよ」
小林「松本くんはあの日を境に変わったの?」
二宮「若干……」
一同「(笑)」
2017.4.14
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