大橋裕之の「音楽と漫画」を、
岩井澤健治が7年超に及ぶ歳月をかけてアニメーション映画化した『音楽』。
坂本慎太郎、前野朋哉、芹澤興人、平岩紙、竹中直人、岡村靖幸……、
声優として豪華なメンバーが集結した本作で、
ヒロインと言える亜矢役を務めたのが駒井蓮。
映画『名前』で主演を担い、
KOKAMI@networkの舞台「地球防衛軍 苦情処理係」に出演するなど、
多彩な活躍を見せる彼女にインタビュー。


――『音楽』、面白かったです。
「面白いですよね! 自分で言う(笑)」
――声だけで演技をすることは、どうでしたか?
「以前、ラジオドラマをやらせていただいたことがあったのですが、今回は絵に合わせて芝居をしないといけなかったので、難しかったです。岩井澤(健治)監督が7年かけた作品に対して、数日間の短い収録の中で責任を果たせられるよう意識しました」
――実写の演技とは違いましたか?
「亜矢のヴィジュアルは自分と違うし、手の動きひとつとっても、どう動くのかわからない。実写と同じように演じると絵に合わなくなるし、温度感がずれてしまうんです。根本的なところは変わらないんですけど、意識する部分が違いました」
――監督からは、どのような演出がありましたか?
「この作品には独特の間があって、息の使い方については、アフレコ前に指示がありました。意識的に息を使うことは、声優ならではの芝居だと思いました」


「絵」「音」、引き算の結晶のような作品
――亜矢というキャラクターをどうとらえましたか?
「監督から『亜矢は明るく、青春感を出して欲しい』と言われたんです。最初はスケバンっぽい怖いニュアンスを出そうと思っていたので、『おお、どうしよう?』と(笑)。でも、アニメーションになって、動いた絵を観て、監督の狙いに気づけたところがいっぱいありました」
――それはどういうところですか?

駒井蓮さん 「亜矢のヴィジュアルはスケバンっぽくて、言葉はきついけど、実は女の子らしい一面があるんです。それがスキップしている動きだったり、仕草や表情から伝わってきて、演じ方が自然と変わりました」
――完成した作品をご覧になったときは、どう思われましたか?
「大橋(裕之)さんの原作を読ませていただいたときも、テンポ感や空気感が独特で、『なんだ? このマンガは?』と驚いたのですが、完成したアニメーションを観たときも衝撃でした。絵にしても、音にしても、引き算の結晶のような作品だと思いました」


「自分はお芝居が好きなんだな」と後から気づく
――本作では、音楽に対する初期衝動のようなものが描かれています。駒井さんは、演じることに対する初期衝動をいまでも持っていると感じますか?
「ありますね。日本、海外問わず、映画、ドラマを観ていて、『このセリフ、いいな』『この人の表情、マネしたい』と、やってみたくなるんです」
――演じることが好きなんですね。
「そうなんだと思います。でも、それは『このセリフを言いたい』『この作品に出たかった』と思った瞬間に、『ああ、自分はお芝居が好きなんだな』と後から気づくんです」

駒井蓮さん ――どのような作品に参加してみたいと思われるのですか?
「いま、ぱっと浮かんだのは、最近観た韓国ドラマです(笑)。いろんな国の作品を観ていて、それぞれの国の良さを感じます。韓国は、構成やキャラクターの魅力の引き出し方が独特で、ヒロインのあり方もちょっと違うし、面白いです」
――演じてみたい役は?
「高橋一生さんが、本で『自分が成り得たかもしれない自分、という延長上でしか役をつくれない』とおっしゃっていて、それを読んで『ああ、なるほどな』と思ったんです。自分とまったく違う人間を演じることは楽しそうなんですけど、いまは学校のクラスの中で、カーストで最下位になってしまった人だったり、同じ場所で生きてきたのに、なぜこうなっちゃったんだろう?という人に興味があります」
――駒井さんは、演じる上で役づくりなど、やり方を決めていることはありますか?
「まだ自分のやり方を決めきれていないし、決めなくてもいいかなと。変えられないベースはあると思うんですけど、監督や作品、映像なのか、舞台なのかによってつくり方が違うので、その場、その場で変えていければと思っています」
――意外と器用なところも?
「どうですかね。わからない(笑)。あまり自我がないのかもしれない。『自分はこうしたい』というのはあるんですけど、それは二の次で、スタンスとしては監督の意向に沿いたいと思っています。でも、逆にそこがコンプレックスで、自分の意見を持っている先輩方を見ていて、私はまだそこに行けてない。だから、頑張りたいです」

2020.1.8
[photo]久田路 [styling]津野真吾 [hair&make]mahiro [text]浅川達也
[衣裳協力]ブラウス¥3580/DHOLIC(DHOLIC 0120-989-002)、パンツ¥18500/AMERI(Ameri VINTAGE 03-6712-7887)、イヤリング¥1500/OSEWAYA(お世話や 03-5358-1448)すべて税別、そのほかスタイリスト私物
[撮影協力]下北沢anthrop


komai ren
00年青森県生まれ。「ニコラ」の専属モデルとして活動をはじめ、16年に女優デビュー。18年、『名前』で映画初主演。19年は、舞台「KOKAMI@network『地球防衛軍 苦情処理係』」、『第6回 ドラマ甲子園 大賞受賞作品「受験ゾンビ」』、映画『町田くんの世界』などに出演。公開待機作に『朝が来る』(20年初夏公開予定)がある。


音楽
脚本・絵コンテ・キャラタクターデザイン・作画監督・美術監督・編集/岩井澤健治
原作/大橋裕之「音楽 完全版」(カンゼン)
声の出演/坂本慎太郎 駒井蓮 前野朋哉 芹澤興人 平岩紙 竹中直人 ほか
配給/ロックンロール・マウンテン (19/日本/71min)
楽器を触ったこともなかった不良学生、研二、太田、朝倉の3人は、思いつきでバンド「古武術」を結成。ある日、彼らは「古美術」のメンバー、森田から「坂本町ロックフェスティバル」への出演を薦められるが......。1/11~新宿武蔵野館ほか全国順次公開
©大橋裕之/ロックンロール・マウンテン/Tip Top


映画『音楽』オフィシャルサイト