SKIPシティ国際Dシネマ映画祭、田辺弁慶映画祭など
数多くの映画祭で賞賛を集めた中川奈月監督の『彼女はひとり』が
ついに劇場公開される。
主人公・澄子を演じたのは『本気のしるし 劇場版』でも強烈な印象を残した福永朱梨。
役者としての出発点ともいうべき本作にどのように臨んだのか。
――2018年の作品ですが、撮影はいつ行われたのですか?
「2016年の春です。当時、21歳で、事務所に入って1年ちょっと経った頃でした」
――オーディションで澄子役に決まったそうですね。中川監督は福永さんのどこを見てキャスティングされたと思いますか?
「最初に素で自己紹介をするのではなくて、澄子になりきった状態で部屋に入ったんです。オーディションの参加者を募集している段階で、脚本がすべて公開されていたので、自分なりに役づくりをして臨むことができました。監督は最初、『怖い人が来た』と思ったみたいで(笑)」
――オーディションの澄子と、撮影に入ってからの澄子で違いはありましたか?
「そのときの自分のイメージと、監督のイメージがあっていたみたいで、あまり修正はなかったです。撮影前に澄子の過去など、バックボーンは話し合いましたが、大幅な変更はありませんでした」
――では、オーディションの段階で見せた澄子が、映画に写っている?
「そうですね(笑)」
――中川監督は、どのような演出を?
「あまり細かく演出されることはなく、任せていただきました。監督の中で『ここはどうしてもこうして欲しい』というときは、言葉で的確に伝えてくださいました」
――現場の雰囲気はどうでしたか?
「ベテランの技師さんばかりで、澄ちゃんと呼んでいただいて、のびのびとやらせていただきました。撮影が芦澤明子さん(黒沢清監督作品の撮影で知られる)で、監督が悩んでいるときに、芦澤さんが『じゃあ、こっちのパターンも撮ってみて、編集のときに決めたらいいんじゃない?』と提案してくださることもありました」
幅広くいろんな役をやっていきたい
――ご自身の芝居の方向性は、この数年で変化しましたか?
「ワークショップに通ったりして、自分がいままでやってこなかった手法を学びました。いろいろ試していく中で自分にはあわないなと思うやり方もありましたし、この方法だったら自分の全力を出せると思うこともありました」
――割と役づくりをしっかりするタイプですか?
「そうですね。キャラクターがなぜこの行動をとるのか、この人物にとってハードルはなにか、ということを細かく分析していって、自分の中に落とし込んでいく作業をします」
――準備はしっかりされる?
「はい、心配性なので(笑)」
――『彼女はひとり』で、あのときだからできたと思ったところはありますか?
「自分でも顔つきが違うと思うし、勢いがあって、あのときにしか出せなかった澄子の孤独、性格があったと思います。自分の中に澄子のような要素はあまりないんです。だけど、演じてみて自分は影のある役が得意で、周りからもそういう風に見られるんだなとわかって、それは自分の武器なんだなと気づきました。そういう意味では、この映画がその後の活動のベースになっていると感じます」
――今後はどのような方向で活動をしていきたいですか?
「ここ数年は実際の年齢よりも下の役を演じることが多かったのですが、最近は年相応の役も増えてきたので、幅広くいろんな役をやっていきたいです。また中川さんとタッグを組んで『彼女はひとり』を超えられるような作品を一緒につくりたいと思っています」
2021.10.21
[photo]久田路 [text]浅川達也
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