自分とは違う役でも、自分自身が出てきてしまう
──劇中、蝶野、千歌子、(岩田奏さん演じる)一晟の3人が疑似家族のように見えるシーンがあります。あそこはどのように撮影を?
大西「どうでしたっけ?」
毎熊「監督からは、そのシーンを撮る前に疑似家族というか、そういう説明があって。『じゃあ、グラスをあわせたところから3人の即興演技が始まります。音は使いませんから、ただ楽しくラーメン食べてください』という感じで言われました」
──俳優同士で話し合いは?
毎熊「それぞれがどう台本を読んだとか、じゃあこういうふうにしましょうといったすり合わせはなかったです。僕はここのシーンがある意味クライマックスになるんだろうなと感じました。撮影のときは、絶対使えないようなくだらないことをしゃべっていました」
──監督としては、3人が役としていて欲しかったのか、それとも本人としていて欲しかったのか、そういう話はあったのですか?
毎熊「特になかったです。ただ、演じているんだけど、素に近かったとは思います」
大西「毎熊さんは広島弁が出てました(笑)」
毎熊「出てた(笑)?」
大西「わたしは完全に素でした」
毎熊「確かに。標準語じゃなかったし(笑)。即興演技なので、僕がいろいろぶっ込もうといろいろやったんです」
大西「あのときはびっくりしました、それまで毎熊さんはずっと蝶野でいらっしゃったから。そのシーンではすごく優しい目をされていて、こんな目をしている人なんやって」
毎熊「そうか(笑)。あまりニコニコみんなでしているシーンがそんなにないから」
大西「だから、蝶野がどうとかというより、毎熊さんは優しい人なんだって感じながらやってました。岩田くんも饒舌になって、『ああ、本当はこういう子なのかもしれないな』と思ったり、いろんな発見がありました」
毎熊「結構しゃべるし(笑)」
大西「ようしゃべるし(笑)」
──そういう意味では、本作には役とご自身が曖昧になっているところが写っているわけですね。どの作品でも、演じる上で役とご自身が地続きの部分があると感じますか?
大西「どうですか?」
毎熊「それは作品だったり、監督だったり、役だったりで、毎回違うと思ってるんです。僕の好みとしては、普段の自分とまったく違うキャラクターを演じる方が好きです。でも、そういう役をやっても、どうしても自分自身がどこかに出てきてしまう。そういう意味では地続きなのかなと思います」
大西「私は完全に地続きです。自分自身の割合と役の割合を役ごとに調整している感じ。そうじゃないとできないです。自分の記憶を引っ張ってきて、それプラス、想像とか、書物をいろいろ読んで、足していって混ぜるみたいな感じです」
──今作を通して、演技について改めて考えたり、感じられたことはありましたか?
大西「台本を読んで、同じ芝居を何回も繰り返す必要があると知って、こんなん私、できるんだろうか?って不安だったんです。でも、不思議と繰り返すごとに深層に入っていける感覚があって、あれは何だったんだろう?と思いました。衣装も違うし、ライティングもちょっとずつ変わっていたから、そういうことが作用したのかもしれないけど。同じセリフでも、千歌子と誠が本当に家具屋さんにいると思い込んだら、芝居ってこんなに変わるんだ!?ってびっくりしました」
毎熊「僕も近いことを思いました。この映画の中で演技レッスンは、『(目に見えない)足元にあるものを拾ってみてください』というところから始まります。かつてラジオドラマに出たとき、『あ、あそこのコンビニ寄ろうよ』というセリフがあったんです。たった一言なのに、ディレクターさんから『どんなコンビニか想像ができません』『あなたはどんなコンビニを見つけたんですか?』『トイレに行きたいのか、腹が減ってるのか、疲れたから行きたいのか』と。それは実写でも、丘の上を歩いていって景色を見るという場面で、監督から『何が見えてるの?』と。そういうことをこの仕事を始めたばかりの頃に言われたんです。やっぱりどんな些細な一瞬でも、演じるときにイメージを深くすることが大事だというのは改めて思いました」
2025.3.10
[photo]久田路 [text]浅川達也
maiguma katsuya |
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