記者会見レポート

『素敵なダイナマイトスキャンダル』東京プレミア上映舞台挨拶

70~80年代を舞台に描かれる〈狂乱〉青春グラフィティ


2018.2.26@
新宿区

豪華キャストが勢ぞろい。


「写真時代」「ニューセルフ」など、伝説的な雑誌を世に送り出した編集長、末井昭氏の自伝的エッセイを映画化した『素敵なダイナマイトスキャンダル』。7歳の時に母親が隣家の若い息子とダイナマイト心中するという壮絶な体験をした末井青年が、工員、キャバレーの看板描きと職を転々としながら、70~80年代のサブカルチャーを牽引する伝説の雑誌編集長となっていくまでを描いた青春グラフィティです。今作の東京プレミア上映舞台挨拶が、テアトル新宿にて行われました。
壇上には主演の柄本佑さん、前田敦子さん、三浦透子さん、尾野真千子さん、原作者の末井昭さん、冨永昌敬監督が登場。末井さんは、「2時間18分の長い映画ですが、飽きない! 3回観たけど飽きません。何回も何回も観て欲しい。熱量も高いし、女優さんたちが素晴らしい演技だし。悪いところがないですね」と絶賛。冨永監督も「末井さんに映画化させてくださいと言ったのが7、8年前。そのさらに5年くらい前に原作となる本を手にとって、絶対映画化しようと思いました。他の人に取られないよう早くしなきゃと。なので、感無量すぎて……他の作品でもこういう舞台挨拶の機会を頂きますが、今回は特に嬉しいです。ありがとうございます」と今作への思い入れを語りました。

素敵なダイナマイトスキャンダル

今作では、末井の妻・牧子役を前田敦子さん、愛人・笛子役を三浦透子さん、母・富子役を尾野真千子さんが演じています。しかし、共演シーンはなく、撮影現場での3人は一度も顔を合わせなかったとのこと。柄本さんは3人について「前田さんは『僕のあっちゃん』にしたくなる魅力のある人。色気を漂わせる白いキャンバスですね。三浦さんはチョイチョイチョイっというシーン(ラブシーン)があるんですけど、なんというかどっしりとされていて……歳は下なんですけど、僕の方が付いていきます!みたいな。付いて行きたくなるくらい後ろ姿がたくましい女優さんです。尾野さんとは共演シーンがないんです。完成を観て、すごく綺麗です! 本当色っぽくて、スローのカットが必見! 髪の毛がほつれてるんですけど、似合うんですよね。あまり観たことのない尾野さんを観ていただけるのかな、と。(尾野さんの顔色をうかがいながら)褒めてますよ!」

末井さんは、ご自身を柄本さんが演じることになったと知って、びっくりしたそうです。「贅沢すぎるというか。柄本さんとは初顔合わせの時に飲みに行きましたが、どうも他人に思えない。親戚の人のような気がしました(笑)」。柄本さんも「原作本の表紙の写真を見て、俺に似てると思いました」と、最初から親近感を覚えていたご様子。
冨永監督は「単純に柄本さんと仕事がしたかったということもあるのですが、男前に見える時と面妖な時があって、両方持っている人。一瞬でその両方を見せてくれる人は佑くんしか知らないです。複雑だけど明るい人を演じることができる人は誰だろうと考えたときに、佑くんしか出てこなかったんです。引き受けてくださってすごく嬉しかった。女優はまずは末井さんを驚かせたいなと思いました。そしてお客さんも納得してくれる方達。引き受けてくださってびっくりしたんですけど(笑)」と、キャスティングの理由について明かしました。

素敵なダイナマイトスキャンダル

そして、話題は映画のタイトルにかけて「皆さんの素敵なスキャンダル」について。
柄本「ストリーキングのシーンがあるんですが、ペンキをかぶるので前貼りがいつの間にか外れてたんです。3回くらい付け替えました」
末井「僕は実際にストリーキングをやって、映画ではそれが再現されているんだけど、あれは1970年の11月25日のことなんですよ。なぜ日にちまで覚えているかと言うと、その昼間に三島由紀夫が市ヶ谷で割腹自殺をしたんです。そして、同じ日に僕が尊敬するテナーサックス奏者のアルバート・アイラーが、ハドソン川に浮かんでいた。そのときにはまだ生まれていない人も、その頃のことを想像しながら映画を観てもらえるといいかなと思います」
前田「柄本さんの女装のシーンの直前に一緒の撮影だったのですが、『絶対に綺麗だから』って自信があるんですよ。連絡先を交換してなかったんですが、わざわざ奥さんの(安藤)サクラさんのLINEグループを作って(女装した写真を)送って来てくれました。でも、綺麗ではないですよね(笑)」
柄本「LINEの返信が『あー、お疲れ様です』でした(笑)」
三浦「この映画に出ることが、親にほぼ事後報告だったことです。いい映画なのできっと(事後報告でも)大丈夫って言ってもらえる自信があったので。いま親子関係は良好なので大丈夫です(笑)」
尾野「着物で転ぶと、ちょっとはだけてるんですね。次のカットでも同じようにはだけていないといけないのですが、普通はそれを自分でやるんです。でも、監督がサーっときて、パッと乱すんですよね。スキャンダルですよね(笑)」
冨永「(演者のことは)監督が一番見てますからね!」


素敵なダイナマイトスキャンダル
監督・脚本/冨永昌敬 原作/末井昭 出演/柄本佑 前田敦子 三浦透子 峯田和伸 松重豊 村上淳 尾野真千子 ほか 配給/東京テアトル (18/日本/138min)
3/17~テアトル新宿、池袋シネマ・ロサほか全国公開
『素敵なダイナマイトスキャンダル』のオフィシャルHP


ピクトアップ#111(18年2/17発売号)では柄本佑さん×末井昭さん×冨永昌敬監督の
鼎談を掲載しています。