記者会見レポート

『アイスと雨音』公開初日舞台挨拶

命を燃やした、74分ワンカット


2018.3.3@
渋谷区

キャストたちは、オーディションで選ばれた。


『私たちのハァハァ』『アズミ・ハルコは行方不明』、テレビドラマ『バイプレイヤーズ~もしも6人の名脇役がシェアハウスで暮らしたら~』など、話題作を送り出し続ける松居大悟監督。
最新作は74分ワンカットで描く青春群像劇『アイスと雨音』。3月3日より公開がスタートし、初日は松居監督、音楽を手がけたMOROHAのおふたり、森田想さん、田中怜子さん、田中偉登さん、青木柚さん、紅甘さん、戸塚丈太郎さん、門井一将さん、若杉実森さんら、8人のキャストが登壇し、舞台挨拶を行った。

素敵なダイナマイトスキャンダル 「こんなにたくさんの方に観に来ていただいて、びっくりしています」(森田)、「久しぶりにキャストのメンバー、MOROHAのおふたり、松居さんにお会いして、テンションがあがっています」(田中偉登)、「今日が楽しみでした」(田中怜子)、「お越しいただき、ありがとうございます」(紅甘)、「スタートに立ったことがうれしいのと同時にさみしい気持もあります」(戸塚)、「今日はたくさんの人にお越しいただいて、ありがとうございます」(青木)、「この作品が広がっていくといいなと思っています」(若杉)、「楽しんでいただけたら、うれしいです」(門井)と、キャストたちは満席の観客を前に、それぞれに喜びと感謝の言葉を口にした。

そもそも本作の企画は松居監督が、演出をする舞台が突如中止になったことに端を発している。そして、MOROHAのアフロさんの「半年後にその怒りなくなっているけど、それでいいの?」という言葉から、映画をつくろうと決意したと言う。
松居「アフロが言ったように、感情は時間が経つと忘れたり、次の作品に入ると変わっていったりする。だけど、その感情は間違いなく存在していて、それを作品に落とし込むことは、いま表現する仕事に関わっている身として価値があると思えました」
 そして、本作に出演し、劇中で演奏したMOROHAについても、「普通のバンドだったらできない。MOROHAだから、この企画はお願いできた」と加えた。

素敵なダイナマイトスキャンダル キャストたちは、2週間のリハーサルを経て、撮影にのぞんだ。森田想は、松居監督から本番3日前に呼び出されたエピソードを明かした。
森田「『いままで固めてきたキャラやセリフの言い方を全部一度忘れてくれ』と言われて。そのときは『わかりました』と答えたけど、稽古を再開すると全然できなくて、戸惑って、あせって、不安になりました。だけど、それがあったから、むしゃくしゃした、自分の素も映画に投影できたのかなと思います」
松居「想は負担が大きかったんです。衣裳替えもあるし、カメラも想のお芝居で動くので。まず想が命を燃やしてないと、みんなが燃えないじゃないですか」
田中(偉)「(劇中と同じフレーズに)流行らせようとしてます(笑)?」
松居「違う(笑)。燃えている芝居じゃなくて、本当に燃えてるのか?というニュアンスで言ったんです」

素敵なダイナマイトスキャンダル
田中(偉)「松居さんは擬音でしゃべられるので、こんな人は初めてだなと思ったんですけど(笑)。稽古中は近い距離で接してくださいました。稽古していく中で、命を燃やすとはどういうことなのか、松居さんの熱量を感じて、僕らもわかっていったんじゃないかなと思っています」

素敵なダイナマイトスキャンダル また今作で映画初出演、まったくの演技未経験だった田中怜子さんの抜擢についてもコメントが。
松居「ただ演技をやりたいからと、制服のままオーディションを受けに来て、『ダメだったら深夜バスで帰ります』という感じだったんです。セリフの読み方も、技術ではなく、ただ衝動で言っているのが美しいと思いました。こういう人がこの作品には絶対に必要だなと思ったときに、いろんなことが見えてきました」
田中怜子さんも「まさか受かるとは思ってなくて。去年の自分からしたら、1年後にこんな大きな舞台に立っているとは思いもよりませんでした。いまの状況は自分にとって大きな経験だし、人生の中でも宝物のような日々を過ごせることがうれしいです」と語った。

素敵なダイナマイトスキャンダル アフロさんは、今作の主題歌「遠郷タワー」が生まれた経緯について語りました。
「監督が合格の電話をかけたときに、僕は隣にいたんです。そのときに松居さんは『東京にいてください』と言って、それは自分がかつて上京したときに、誰かに言ってもらいたかった一言だと思ったんです。そこから気持ちを拾って曲を書きました。同時に、オーディションで合格しなかった人たちが、このキャストが発表されたときに、どんな気持ちになるのかな、と考えました。あのオーディションで印象深かったのは、勝負を挑みにくる若者たち。一生懸命挑んだ子たちに届くような曲を書けたらいいなという気持ちも強かったです」
舞台挨拶が終わると、劇場にはキャストたちにサインを求める行列が。それに丁寧に応えるメンバーのみなさんの姿が印象的でした。


アイスと雨音
監督・脚本/松居大悟 音楽/MOROHA 出演/森田想 田中怜子 田中偉登 青木柚 紅甘 戸塚丈太郎 門井一将 若杉実森 ほか 配給/SPOTTED PRODUCTIONS (17/日本/78min) 3/3〜渋谷ユーロスペースほか順次全国順次公開
『アイスと雨音』のオフィシャルHP


ピクトアップ#111(18年2/17発売号)では松居大悟監督のインタビュー、MOROHAのおふたりと田中怜子さんの対談、森田想さん×青木柚さん×門井一将さん×田中偉登さん×戸塚丈太郎×若杉実森さんの座談会を掲載しています。