芸人、かく語りき
vol.5 ナイツ前編

本誌で連載中、実力派芸人を紹介するコーナー「芸人、かく語りき」。つい先日、平成25年度 文化庁芸術祭賞の大衆芸能部門優秀賞を獲得したナイツの登場です。塙宣之さんと土屋伸之さんのインタビューをお楽しみください。

   

knights
01年結成。08年M-1グランプリ決勝に進出し一躍有名に。内海桂子の弟子であり三遊亭小遊三一門として寄席でも活躍し続ける。

hanawa nobuyuki(左)
78年千葉県生まれ。漫才協会理事。プロ野球をこよなく愛する。『マツコ&有吉の怒り新党』(テレビ朝日)でナレーションを務めている。

tsuchiya nobuyuki(右)
78年東京都生まれ。漫才協会理事。競馬に詳しく、関連番組に出演することも。『0655』(Eテレ)出演中。

賞レースに出なくなった理由と、立つべき場所

ナイツ


──2011年の「THE MANZAI」を最後に、いわゆる賞レースというものに出なくなったのには理由があるんでしょうか?
塙 出たい理由と出たくない理由を箇条書きにして、出たくない方が多かった。いや、出たくないというわけじゃないですけど、面白いネタが2本なかったりとかね。「THE MANZAI」は「M-1グランプリ」にあった芸歴10年以内という縛りがないんです。僕らがかつてM-1に出られたのは、その縛りがあったから。だからすでにそこそこ面白いと分かっている人は、そんなに出なくてもいいんじゃないかなと個人的には思うんですよね。そしたらもっと面白い漫才師がいっぱい出られると思うんですよ。いつになったらトレンディエンジェルが評価されるんだ!
土屋 そっちが観たいでしょ。みんなトレンディエンジェルが観たいでしょ、やっぱり。
塙 僕イチ押しのトレンディエンジェルが。トレンディエンジェルと三四郎との決勝がこっちは観たいわけじゃないですか。
土屋 ねえ。
塙 それが当たり前でいいじゃないですか。でも、決勝に行けないんですよ。
土屋 芸歴10年以内の縛りがあったら三四郎も決勝に行けたでしょうね。
塙 絶対行ってますよ。三四郎なんかもう、優勝候補と言われちゃうかもしれないですよ、わかんないですけど(笑)。
──だからこそ2012年にナイツさんが出場しなかったとき、カッコいいと思ったんです。
塙 いえいえ、勝ち逃げですよ。
土屋 カッコよくはない(笑)。
塙 M-1のときは、決勝戦でウケなかったんです。NON STYLEとかスリムクラブ、2009年のパンクブーブーさんとかに完全にウケの量で負けてたんですよね。だから決勝の場で超ウケるというのが一度やってみたかったんです。2011年のTHE MANZAIでけっこうウケたから、それで満足しました。
──結果、ナイツさんは若手芸人の中でも独自の立ち位置をずっとキープしていますね。
塙 テレビに出始めたころ、ビートたけしさんに「漫才協会なんだろ、ずっと漫才やった方がいいよ」って言われたんです。ほかにもピンでテレビで活躍している人たちが、「ずっとネタをつくって舞台に立って漫才をやる方がいい」と言ってくださる。そういう人たちが言うんなら間違いないんじゃないかと思うんです。

[text]釣木文恵 [photo]相澤心也


ピクトアップ#87の「芸人、かく語りき」では、お二人のポートレイトとオリジナルなスタンスを伝えるインタビューを掲載!


うしろシティ 後編◁ ▷ナイツ 後編「塙さんの顔。これは失いたくないです」