生き方が地味だったから、憧れが飛躍する
日本エレキテル連合
──お互いの好きなところはどこですか?
中野 私は、橋本さんの何もない空っぽなところ。まあ私が、アイデンティティとか育ってきたすべてを抜いたんですけど。この人はキャンバスの状態で、私色に染められる素材なんですよね。
──橋本さんはそれでもよいと思って中野さんとコンビを組んでいるわけですよね。
橋本 はい、よいです。
──橋本さんは、中野さんの好きなところは?
橋本 相方はもう、頭の中がすごい。才能のかたまりだと思っています。だから私は、いじられたりいろいろ言われても、この人が言うことを表現できたらと思うんです。どのネタも「どうやってこの設定思いつくんだろ?」ってびっくりします。最初からメイクも衣装もすべてが頭の中でできあがってるんです。新ネタをやるとき、中野さんにメイクされた顔を鏡で見るたびに「うわ、こんななってるの!?」って驚きがある。まだまだ可能性があると思います。
中野 ……この人にとって私はビジネスパートナーなんですよ。ネタのところをほめてるだけ。私はこんなに愛してるのに。
橋本 いや、そんなことないよ(笑)!
中野 ネタをつくらないといけないライブが近くなると優しくなるんです。私が橋本さんを支配しているように見えて、こっちが転がされてるんですよ。
──(笑)。中野さんはどんなところからネタを発想するんですか?
中野 いろんな方法があります。まずこの衣装が着たいというところから始まるもの。それから、私は妻になったことがいちどもないので妻になってみたい、愛人にタンカをきってみたいとか。女性なのでいろんなことがしたいんです。そういうところからはじまります。
──本当に衣装が大事なんですね。そして自分の欲望をネタにする。
中野 衣装と設定ですね。ずっと生き方が地味だったので、自分にない要素をもった人たちに憧れがあって。ヤンキーになったことがないからヤンキーの設定を書くとか。
橋本 愛人とかね。
──お二人のコントはシリーズ化することもありますよね?
中野 そのコントをするときにメイクしながら二人で遊びで掛け合いをやるんです。たとえばケンとクミというヤンキーのキャラクターだったら「われぇ、働きに行きや! 腹におんねん、あんたの子が」とか仕掛けるんですよ。
橋本 「俺の子ちゃうやろ」
中野 「最低やな」とか遊びで続けていくうちに次の展開が生まれたり。最初は真剣につくって、あとは遊び。だからひとつキャラができるとラクなんです。
[text]釣木文恵 [photo]相澤心也
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