舞台は大阪のストリップ劇場。
映画監督を夢見る劇団座長が、その一歩を踏み出そうとする……。
ジャルジャル後藤淳平にとって初となる単独主演映画は、
小説家、劇作家、演出家など多方面に活躍する木下半太の
自伝的物語にして初監督作品、『ロックンロール・ストリップ』だ。
──後藤さん起用は監督の要望だったそうですね。
木下 はい。〝売れない劇団の座長・勇太〟という主人公。いい意味で「負け犬臭」がある人を探していて、……表現に語弊があったかもしれないです(笑)。
後藤 いやいや。ありがたいお話です(笑)。
木下 ジャルジャルのおふたり(後藤と福徳秀介)は知名度も高いし、人気者。でも常に、なにかに向かって戦っている印象があったので……。
──野心を秘めている、と。
木下 そうです。それでいて、その野心をオモテにバコーッっと出しまくっているわけではない。そこがイメージにピッタリやった。それにコントを見ていて、後藤くんの演技に惹かれていたんです。あと地元が近い。僕、隣り町出身なんです。大阪って北と南で人種が全然違うんですよ。
後藤 淀川をはさんで全然違う(笑)。
──おふたりはどちらなんですか?
木下 北です。ちょっと上品な方です(笑)。
後藤 北摂ですね(笑)。
木下 勇太は、コテコテな南の人より、キタの人に演じてもらいたいと思っていたんです。
〝自分のことを誰も知らない〟からこそ、必死であがく
──木下監督の来歴は劇団を主宰したり、本を書いたりと、幅広いですよね。
木下 それでも目指すゴールは決まっていました。すべては映画監督になるためです。とりあえずやることがなかったので、劇団をやって、そのうち小説の話が来たから小説をやって、と手当たり次第にやってきただけで。
──木下さんのがむしゃらさに比べると、後藤さんはお笑い一本。スマートにステップアップしてきた印象があります。
後藤 そんなことないですよ(笑)。僕らも成功を目指していたけれど、そのイメージが漠然としているんで、とにかくいろんなことを……。
木下 チャレンジしてましたよね? ふたりでオールヌードになってなかった(笑)?
後藤 やりました。とにかく思いつく限り、「これおもしろいんとちゃうか」ってことをやっているうちに、なんとなく方向性が見えてきた感じです。
──それで勇太に共感できたと。でも勇太は劇団員。お笑いの下積みとはまた少し違うのでは?
後藤 ひじょうに似てますね、「売れたい」「でもどうしたらええかわからん」って、あがく感じが。自分らで箱(劇場)を押さえて、舞台つくって、チケットを手売りして、お客さんを集めて……っていう日々はそっくりです。
木下 「自分らのこと、誰も知らない」という出発点の感覚は一緒だと思います。
目の前に、夢がかなっていく最中の人物がいた
──後藤さんは現場で鳥肌が立ったことがあったとか。
後藤 「映画監督になるのが夢です」って口にする勇太を、映画監督になった木下さんが撮っている……。鳥肌、立ちますよね、「どういう状況や!」って。
木下 僕は初監督だから必死で無我夢中でした。でも現場はひたすら楽しかった。一番僕がテンション高い状態で(笑)。
後藤 監督はとにかくキラキラしていましたし、現場には〝夢がかなっていく最中の人をみんなで支える〟というチーム感がありました。
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