辻凪子さん

 


──とはいえ、磯部さんは監督として演出されていると思うのですが、どうやってお芝居をつけるのですか?
「この作品に関してはほぼあて書きなので『やってください』みたいな感じで任せてもらっています。動きの調整はあるんですけど、ほぼ何も言わず、カメラの後ろでクスクス笑っています(笑)。お芝居を見て、楽しんでくださっているのかなと」
――NGが出ることはあるのですか?
「演技ではあまりないですね。後ろに人が映ったとか」
――技術的なところで。
「そうですね」
――磯部さんの監督としての才能を感じるのはどんなところですか?
「みんなが気負わずにやれる雰囲気をつくってくださるんです。リラックスしたままロケ地に行って、そこにいる共演者たちと『しゃべる』。こうしようとは別に思わず、気楽に入れる映画はこの作品だけですね。磯部さんはほわーんとしてはって、いつも裸足でクロックスを履いている。冬でも裸足でクロックスみたいな(笑)。でも、考えているというか」
――考えていないとこの映画はつくれないですよね(笑)。
「(笑)。たぶん、普段から人をめっちゃ観察しているんです。現場でも役者の行動を見ている。だから脚本も変わっていくんだと思います」
――この作品は今後も続けていく予定ですか?
「はい、本当に気が向いたらという感じで、無理せず続けられれば。『どっちかが死ぬまではやろう』みたいになっています。わたしも私生活が変わっていって、30代になったらなったでいろんなエピソードが増えてくるし、わたしとともに凪の生活も変化していくと思うので、すごく楽しみです。いずれは『寅さん』みたいになったらいいですね。まだ両親が登場していないのですが、監督の頭の中には『この人がいい』というアイデアがあるらしくて、まだ出さずにとっているみたいです。誰になるのか楽しみです」

2023.4.19
[photo]久田路 [text]浅川達也


辻凪子さん

tsuji nagiko
95年大阪府生まれ。京都造形芸術大学映画学科卒業。監督作がイギリスや韓国の映画祭に招待されるなど国内外でも評価が高く、女優としても映画、テレビ、舞台と幅広く活躍。間寛平座長「劇団間座」にレギュラー出演するほか、NHK連続テレビ小説『なつぞら』『わろてんか』など5作に出演。ペク・ジェホ監督の日韓合作映画『大観覧車』で国際デビューも果たしている。22年には監督作『I AM JAM ピザの惑星危機一髪!』の活弁興行が話題を呼んだ。


凪の憂鬱
監督・脚本/磯部鉄平 脚本/谷口慈彦 永井和男 出演/辻凪子 根矢涼香 佐々木詩音 佐藤あみ 川久保晴 ほか 配給/モクカ (23/日本/98min)
凪(ナギ)は大阪で契約社員として働いている。はじめての有給休暇前日に1年間付き合ってきた彼氏に振られる。怪談をしたり、ライブへ行ったり、ゲートボールをしたり、昔好きだった人に再会したり、大喧嘩したり……。凪のメランコリックな有給休暇は過ぎていく。 4/21~シモキタ エキマエ シネマ K2、6/3~大阪シアターセブン、6/9~京都シネマにて公開
©belly roll film

映画『凪の憂鬱』オフィシャルサイト

辻凪子 前篇へ◁