大塚寧々さん

 


──女優というお仕事の喜びといったらなんでしょう。
「わからないですよね……。喜びよりも、『できなかったな』『こうすればよかったのかな』と毎回悩んでいる感じです。でもたぶん、答なんて出ない。出ないんだけれども、やっぱり全力でやるんです。そうじゃないと、泣いたり笑ったり、怒ったりはできない。ひとつの作品に向き合うことによって、ひとつの人生を生きるわけじゃないですか。その積み重ねは喜びというか、ありがたいなと思います。それに、みんなでひとつの作品をつくっている感じが好きです、私」
──現場で感情が大きく振れるように、プライベートで感情を抑えたりすることはありますか。
「ふだんはふだんで、全然好きなことをやって楽しんでいます。音楽をじっくりひとりで聴いたり、映画を観たり、本を読んだり、アートに触れたり。アウトプットすることばかりでなく、インプットする時間は大切にしています」

考えすぎると、いい感じには絶対ならない
──女優としての今後のビジョンをお聞かせください。
「あまり目標を持たないタイプなんです。直観というか、感覚は大切にするんですけど。決めてしまうと、それに捉われてしまうことに恐怖を感じるし、ほかが見えなくなる感じが苦手で(笑)」
──都度、直感で判断しながら歩んでいるんですね。
「もちろん脚本はていねいに読みます。それに自分なりのこだわりはあります。どなたにもあると思いますけど、この音楽は好きだけど、これは苦手、みたいな。そこははっきりしているのかもしれないですね」

大塚さん ──前向きな印象があります。ミスをしても、あまりくよくよしなさそうです。
「答が出るのなら、くよくよします。でもだいたいのことって、答が出なかったり、時間がかかったりするじゃないですか。もちろんなにかがあればすごく考えるし、私はむしろ考え尽くすタイプだと思う。でも考え過ぎるといい感じには絶対にならない。だから『ま、いいや』という風に、あまり固執しないようにしています。悩みごとや、『なんか違うな』と違和感を覚えたときも、あまりそこに留まらないようにする。なるべく早く、それを手放す。そこにずっと居たら、次が来ないから」
──「直感で歩んできた」という言い方は失礼だったかもしれませんね。勘だけではないわけですから。
「いやいや、直感はすごくありますよ。勘も大事ですし(笑)」
──目標は立てないとのことでしたが、『こういう作品をやりたい』みたいなイメージもとくにはないんでしょうか。
「やりたいと思える作品に出会えることは幸せですけど、とくにイメージは持っていないです。ただ私、毎日本は読んでいるんですよ」
──小説ですか?
「いろいろです。読んでいると『これ、映画になるといいのにな』と思うことはよくあります」
──やってみてはいかがですか?
「どういう意味ですか?」
──プロデューサーなり、監督なり、映画をつくることを目標に掲げてみてはいかがでしょう。
「いえいえいえ、そこまでは自分の気持ちがいかないです(笑)。私は演じたいんだと思います」

2025.10.24
[photo]久田路 [text]八王子真也


ohtsuka nene
68年東京都生まれ。日本大学藝術学部写真学科卒業。ドラマ『HERO』(01)、『Dr.コトー診療所』(03、04)、『おっさんずラブ』シリーズ(18、24)など数々の話題作に出演。映画『余命一年の僕が、余命半年の君と出会った話。』『KYロック』(ともに24)、ドラマ『相続探偵』『ススキノ・インターン〜マーケ学生ユキナの、スナック立て直し記〜』『殺した夫が帰ってきました』(すべて25)など。『君の顔では泣けない』が11月14日に、『楓』が12月19日公開。


ソーゾク
監督・脚本/藤村磨実也 出演/大塚寧々 中山忍 松本明子 布施博 有森也実 配給/ふればり ベストブレーン (25/日本/101min)
母親が亡くなり、悲しみに暮れる鈴木家の面々だったが、その遺産をめぐり、長女と次女の家族、弟夫婦、亡き長男の未亡人たちの関係はこじれていく。そしてついには裁判沙汰に──。全国順次公開中
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映画『ソーゾク』オフィシャルサイト

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