芸人、かく語りき
vol.20 マツモトクラブ 後編

本誌#95の「芸人、かく語りき」に登場いただいたマツモトクラブさん。web版の後編では、ピン芸人としての“相方”について語っていただきました。

   

matsumoto club
76年東京都生まれ。専門学校卒業後、劇団シェイクスピア・シアターに参加。「十二夜」のトービー、「マクベス」のマクダフを演じるなど、シェイクスピア作品に多数出演。『R-1ぐらんぷり2015』で第2位に輝き一躍注目を集める。

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どんなときもブレない、信頼の置ける“相方”

マツモトクラブ


──マツモトクラブさんはネタのなかでポップな曲をいくつも披露していますが、曲づくりはネタをやるようになってから始めたんですか?
「専門学校のとき、同級生でかつてバンドを組んでいたというやつがいて、彼の家で初めてギターに触れたんです。いつもそいつがギターを弾いて、横で僕がそれにあわせて適当に歌うという遊びをけっこうやっていた。その流れですね」
──そんなルーツがあって、ネタに曲が入るように。
「いまネタでやっているのは当時歌っていたような曲とはまた違うんですけど、感覚としてはあの頃と同じ遊びの延長線上で、楽しみながらつくっています。僕は簡単な3、4つのコードしか弾けないのでその範囲で」
──いままでつくったなかで一番好きな曲は?
「『おとこのこおんなのこ』(男子のバカバカしくも切実な夢について歌った曲)です(即答)」
──では、好きなネタは?
「やっていて楽しいのは『キャッチボール』(父親と子どもがキャッチボールをしながら会話を交わすネタ)ですね」
──そういえば、「キャッチボール」には子どもの声が入っていますよね?
「ネタで流しているのは、実はぜんぶ自分の声なんですけど、唯一子どもの声だけは、僕のお姉ちゃんの息子です」
──甥っ子さん。うまいですね。
「うまいですよ、なかなか。彼にもマツモトの血は入ってるので、“マツモトクラブ”であることはブレてない」
──なるほど(笑)。音声をつかったネタは、どんなふうにつくっていくんですか?
「まず自分の声を録音して、パソコンで編集します。音声と僕がナマでしゃべるタイミングを調整しながらセリフをなんとなく覚えてしまって、あとはできあがったものを聞きながら、ひたすらブツブツ練習する。だからライブ前なんかは、周りのコンビが壁に向かってネタ合わせをしているのに、ひとりヘッドホンで曲を聞いてカッコつけてるように思われちゃうんですよ」
──確かに(笑)。ネタに修正を加える場合、録音した側の声は吹き込み直すことになるわけですね?
「そうです。1か所だけ直したい場合も、そこだけ直すと全体のテンションと合わなくなるので、けっこう何度も全部を録り直します」
──全部! 録音した声に合わせたネタは、披露中に噛んだりしてタイミングがずれたら大変ですね。
「セリフを忘れたことは何度かあります。でも、コンビだとふたりとも忘れて沈黙になってしまう場合もあるじゃないですか。僕の場合はもし僕が忘れても、もう片方はぜんぜんブレずにがんがん進んでくれるから助かります」
──進んでしまうのは困りませんか?
「直後は多少わけがわからなくなりますが、なんとか建て直せるものですよ。相方がしっかりしていると(笑)」

[text]釣木文恵 [photo]相澤心也


ピクトアップ#95の「芸人、かく語りき」では、マツモトクラブさんのポートレイトとオリジナルなスタンスを伝えるインタビューを掲載!


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