“看板”をつくらない勇気
TKO
──いまも月1回、新ネタをライブで下ろしているということですが、TKOさんほどの芸歴ともなると、周りからはウケて当たり前と思われている部分もありそうですね。
木本 うーん、自分らでは、ウケて当たり前と思ってないんです。ウケて当たり前のやり方はきっとあると思うんですが、それだけは絶対、ふたりとも避ける。
──ウケて当たり前のやり方ではない道を選ぶ?
木本 うん。だからいまだに自分たちの方程式も見つかってないですし。
──たしかに、TKOさんのネタって「これが TKOっぽい」という形は案外なくて、いろんな形のネタを次々つくっていらっしゃる気がします。そこにルールはない?
木本 そう。ルールがあるとすればただひとつ、「今月の木下は何を面白がってる?」ってところだけ。毎回ネタは集まってつくるんですけど、結局いま木下が何を面白がっているかを見つけるところからネタづくりがスタートするんです。それがたとえ「どこが面白いんやろ」と思っても、広げていく。
木下 (TKOのネタに)色はつけたくないんですよ。同じパターンのものをいくつもつくっても、笑いはとれると思うんです。でもそこへは行きたくなくて、新しいものを何かひとつ取り入れたり、常に冒険はしていようと思ってますね。
木本 でも昔はよう言われたよな、スタッフさんに。「TKOといえばこれ、っていうのを一個つくらなあかん」って。「それがないから君たちは売れないんだ」ってよう言われましたわ。
木下 キャッチーなものを何かつくったほうが、早いんでしょうね。でもこうして25年やってこれてる。それこそリズムネタもギャグもつくらずにきたのは、単純にそこに魅力を感じなかったんでしょう。その月に感じた面白さを優先してきたから、何色か決まってない。一回ずつリセットしながらネタをつくってきたんです。
──わかりやすい看板がないことに対して、悩んだこともあったんでしょうか?
木下 みんな、それを求めてましたからね。
木本 世に出たいという願望は強くあるじゃないですか。世に出る方法が、いわゆる看板だったりする。だとしたら、俺らにはそれは無理やなあっていうのはずっとありました。
──でもこうしていままで続けてこられた。TKOさんは苦労した期間が長くて、「4回上京に失敗している」というようなことがよく紹介されている時期もありましたね。
木本 なんやったらそれが、思いがけず看板になりましたね(笑)。
2016.3.18
[text]釣木文恵 [photo]相澤心也
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