『春を背負って』完成披露試写会 舞台挨拶
松山ケンイチさんが木村大作監督から受け取ったもの
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2014.3.13@渋谷区
楽しそうに撮影をふりかえるみなさんですが、トークは現場の過酷さもあぶり出します。
MC 山上からの景色をどのように感じましたか?
新井 正直、山とか興味がなくて、仕事じゃないとゼッタイに行かないタイプの人間なんですけど、「ああ~、二度と来ることはないだろうな」と思いました。
MC (笑)それじゃ話が終わっちゃうじゃないですか。
新井 正直に言ったらね(笑)。……いや、(雄大な景色を見て)本当にびっくりしたんですよ。「綺麗なんだな」って思ったときに、「うち、歳をとったのかな」とも感じたし。いろんなことを思いました。本当に危険な場所もあって、「死」についても考えたし。
豊川 大きな自然のなかで、本当にちっぽけな人間という存在を改めて感じることができました。でもシナリオには“そのちっぽけな人間にもこんなに豊かな人生が、感情がある”と書かれている。それを松ちゃんや優ちゃんたちと語り合える環境というのは、俳優という仕事を超えて、とても希有な経験になりました。
松山 登っていくたびに、頭のなかから言葉が消えていって、無心になっていく感覚がすごく好きでした。そういう風に、無心になって演じられたらいいなと思っていました。そのためには3000メートルという山の景色が必要でしたし、山の表情を借りて演じられた気がします。
蒼井 ……「山は観るものだな」って思いました。こうやって映画館で観るんだったら……いいなと(笑)。
MC 撮影、相当大変だったということですね?
蒼井 大変だったり、つらかったりしたことはたくさんあったと思うんですけど、エピソードとしては忘れてしまっているんです。でもなんでしょう、観たときに、脳の奧になにかがジワッっとにじみ出してくる感じがありました(笑)。映画はステキなんですけど。
MC 監督は、それでも山に登るんですよね?
木村 僕も……あまり行きたくはないですね(笑)。ただ、自分が関わる作品はキャメラマンのときも、大自然だったからね。それと、しんどい思いをして上に行ったときには、都会の垢が落ちて、清々しい気持ちになります。それはやっぱり上がってみないとわからない。撮りたい場所がそういうところなんで、なんとしても行くっていうことになるんですね。
MC 檀さんは登山について、初めは自信がなかったそうですが。
檀 台本をいただいて、「あ、山、登るんだ」と思って、その日からスクワットをしました。最終的にはリュックをしょいながらスクワットを。半年間鍛えたので、ようやく。
MC 1日何回ぐらい?
檀 150回できるようになりました。
MC ! 事前にトレーニングを積んだ方はほかにいらっしゃいますか?
新井 「山では夜、時間があって、麻雀できる」って事前に聞いていて。もともと好きだったんで、かなり練習をして行きました。
MC 麻雀の練習を、ね(笑)?
その後は、松山さんが麻雀で大負けしたエピソードなど、愉快な“共同生活”トークが展開。檀さんのお酒の飲みっぷりには一同が驚いたようで、豊川さんは「あれが山小屋じゃなくて店だったら、相当タチの悪い客だったんじゃないでしょうか」と語り、観客の笑いを誘いました。
そして、これから映画を観る方々へのメッセージを求められた松山さん。
「“自分の居場所”がテーマになっています。一歩一歩自分が歩いてきた分だけそれが宝になって、その行き着く先が居場所なんだ……いや、違うな……歩いている時点でもう、それが自分の居場所になっているんだということを僕は実感させられました」
さらに「言いたくないんですけど、ひとつだけ、すごくくやしい思いをしたシーンがあります。山小屋にお客さんがいっぱいいるシーンで、ひとりだけ、とんでもなく満面の笑みをしている方がいるんですよ。それを観たときに、僕は役者なのに『あんな笑み、自分はつくれないだろうな』と思ったんです。楽しみにご覧ください」と加えました。そして……。
MC それでは、お時間になりましたので、最後に監督からみなさんに熱いメッセージをお願いします。
木村 ……さっき言ったよね?
MC (あせって)いやいや、こういう、ひとつのスタイルなんですよ。ひととおりやって、もう一回言う。そうじゃないと終われないんですよ!
木村 (気を取り直して)みなさん、この映画を、3ヶ月ありますんで……(聞いたことのあるフレーズに、場内爆笑)。宣伝してもらわないとですね、この映画がもしコケたら、僕の未来はありません! よろしくお願いします!
MC ありがとうございました!
[text]hco
春を背負って
監督・撮影/木村大作 原作/笹本稜平「春を背負って」(文藝春秋刊) 脚本/木村大作 瀧本智行 宮村敏正 出演/松山ケンイチ 蒼井優 小林薫 檀ふみ 豊川悦司 新井浩文 吉田栄作 池松壮亮 安藤サクラ 仲村トオル 市毛良枝 井川比佐志 石橋蓮司 配給/東宝(14/日本)
証券会社に勤めるトレーダー・長嶺亨は父の死をきっかけに、都会での生活に疑問を抱く。やがて、多くの人々に愛された父の山小屋“菫(すみれ)小屋”を継ぐことを決意する──。6/14〜全国東宝系で公開